ビワ

「枇杷の花咲く年の暮れ」

 お隣の花屋さんにビワの花がありました。小さな白い花のまわりは、薄茶色の産毛で覆われ、冬を迎えセーターを着ているようです。たくさんの花を次々に咲かせてくれます。顔を寄せると控えめな甘い香りに驚きました。ビワは虫媒花。受粉を行ってくれる虫たちの少ないこの季節に花のありかをアピールするにはこの香りが必要なのでしょう。

 我が家でも庭の片隅に、何やら芽が出てくるものがありました。腰の高さまで大きくなり、しっかりとした濃い緑の葉に、やっとビワの木と気づきましたが、数年しても実のなる気配がなく、切り倒してしまいました。「桃栗三年柿八年、枇杷十三年」とか。もう少しの辛抱だったのでしょう。

 それにしても、初冬に花をつけ、極寒の季節より実を膨らませ、初夏にみずみずしく甘い実をつけるとは面白い植物です。

 ビワはバラ科ナシ亜科ビワ属。学名はEriobotrya japonica。Japonicaと名前がついていますが、日本原産ではありません。

 中国の揚子江上流部には、現在のビワに近い品種をはじめ、いろいろなビワ属の野生種があります。このあたりが原生地だと見られています。揚子江を下りながら進化して行き、さらに海流に乗って日本海沿岸に流れ着き、自生したのではないかと推測されています。

 食用として栽培されるようになったのは江戸時代中期から。初めは小ぶりな実であったようです。江戸末期は天保年間、長崎の地に中国より果肉の大きな品種が伝わり、「茂木びわ」として本格的に栽培されるようになったとのことです。

 最近は品種改良も進み、大型や糖度の高い品種や、白い品種、さらには、種なしの品種もできているとのことです。

 ビワの名前は楽器の琵琶の形に似ている事から名付けられたとか。

 ビワは、刺激性のある葉の裏の柔毛をブラシなどで取り除き「枇杷葉(ビワヨウ)」として用いられます。

 漢方薬としては「苦・涼」。苦くて熱を冷ます働きがあるとされ、炎症のあるときに用います。

 辛夷清肺湯(しんいせいはいとう)という漢方薬があります。鼻炎や鼻茸などで濃い鼻汁のときに用いられる漢方薬です。この中にコブシの蕾やクチナシの実などとともに用いられます。また、甘露飲(かんろいん)という口内炎に用いられる処方に用いられます。いずれも、熱を冷まし炎症をとる目的で用いられています。

 民間薬としては、シナモンなどと一緒に煎じ、夏に暑気払いのお茶として用いられます。あせもには、中葉3枚程度を500ml程の水で煎じ、冷めてから患部を洗うように浸します。打ち身や捻挫には、湿布として用います。枇杷の葉30枚程度を水洗いし、刻み、水気をとってから焼酎に浸し、これを布につけ、患部にあて、上から蒸しタオルをあてて用います。また、お灸にも用いられます。

 これから半年をかけて大きくなる、ビワの成長を見守ってやりたいものです。

(2010年12月号ピーネット掲載)

閉じる