へちま


へちまはインド原産、瓜科の糸瓜(いとうり)。苦瓜(ゴーヤ)と近縁です。
日本へは江戸時代に渡ってきたとされています。

八五朗「そいつは一体なんでえ」
熊五朗「糸瓜さあ」
八:「何てった」
 熊:「(い)とうりさあ」
八:「お、わかった。いろはの『へ』と『ち』の間だな」「へちまか!」
と言うやりとりがあったかどうかは知りませんが・・・。

へちま化粧水やへちまタワシはご存知の方も多いことでしょう。
江戸時代、幕府直轄の小石川御薬園では大奥の御用に一石一斗三升、約200gのへちま水を納めていたと記録されています。
今でも、愛用者は多く、9月になるとへちま化粧水の問い合わせをいただきます。
ことしは緑のカーテンとやらで、植えておられる方も多いのではないでしょうか。
へちま化粧水は、中秋の名月の頃、雨上がりにへちまの茎を膝程の高さで切り、よく洗い熱湯消毒した1升瓶やペットボトルに根からの茎を入れ、液が溜まるのを待ちます。
この時に、雨水やごみなどが入ると腐るため、アルミホイルなどで口を覆って下さい。
ろ紙かキッチンペーパーなどで透明になるまで濾過をします。きれいになったへちま水を鍋にかけ数分間煮沸、にごりが出れば、今一度、濾過して下さい。冷後、アルコールとグリセリンを加えます。
アルコールはへちま水の1/5程度、グリセリンは1/10程、しっとり化粧水を好まれるときは少し多い目に加えてください。
家庭用では小瓶数本に入れ冷凍保存。使う分だけ溶かし、冷蔵庫で保管すれば1年は使えます。
へちま化粧水はペクチン、リグニンなどの保湿成分の他、日焼けを鎮める働きや、美白効果も言われています。また冬の皮膚の乾燥予防に用いられます。

近頃では見かけることがなくなりましたが、へちまタワシ。垢すりや食器洗いに良く用いられたものです。
へちまの実が硬くなり始めた頃、実を取り、水をはったバケツに沈め、浮き上がらないようにして果肉を腐らせて繊維だけにして作ります。強い腐敗臭が出るので場所を決めて作って下さい。

漢方では、糸瓜。糸瓜絡(熟した実の繊維:へちまタワシ)糸瓜皮(果皮)糸瓜藤(茎)糸瓜子(種子)天羅水(へちま水)として用いられます。
糸瓜は、漢方的にみると、味は甘、性は涼、効能は清熱・去痰。暑い季節の植物は熱を去ると考えます。
性が涼は、西瓜が暑気払いに食べられるのと同じです。
沖縄ではゴーヤなどと同じように若い実を、暑気払いに食べられるとのことです。
天羅水は熱痰、高熱の咳、切れにくい痰に用いられほか、打ち身、熱をもつ関節痛、筋肉痛に用いられます。
 
正岡子規は、結核を患い、三十六歳の若さでなくなりました。ヘチマを愛し、多くの歌や画を残したため、彼の命日は「糸瓜忌(へちまき)」と呼ばれています。

「咳一斗、ヘチマの水も間に合わず」子規、辞世の句です。

(2011年9月号ピーネット掲載)

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