福寿草


旧正月を迎える頃、福寿草の花が咲き始めます。
福寿草はキンポウゲ科フクジュソウ属の多年草。シベリア・中国東北部から日本にかけての落葉樹林、里山の北側斜面でみられます。
落葉樹林では、冬には木の葉が落ち地面までしっかりと光が届きます。そして太陽をいっぱいに浴びた福寿草が花を開かせます。
福寿草は虫媒花。ハナアブなどの虫たちに受粉をしてもらわなければなりませが、福寿草の花には蜜はありません。しかし、福寿草には優れた仕組みがあります。
雪どけがするほどに気温があがった頃、明るい日差しが10分も続くと福寿草の花が開きはじめます。
雪溶けの中でも虫たちに目立つ鮮やかな黄色の花びら。
蝋を塗ったようにつやのある花びらが効率的に太陽光を反射します。
コンピューター制御の太陽熱発電パラポラアンテナの様に、花びらをコントロールして、正確に熱をオシベの辺りに集めます。
光が翳って来ると花びらを閉じてオシベやメシベを守ります。
さらに太陽の正面を向くよう、絶えず首を振り日光を追いかけていきます。
オシベの周辺は、まわりの気温より10度近くも暖かくなるとのことです。
花びらの中で暖かく虫たちを迎え、受粉をしてもらう仕組みは見事というほかはありません。

福寿草は暖かな春を迎える頃、大きく伸びた葉で光合成を行い、地下茎に栄養を貯めながら種を熟します。そして、こぼれた種は蟻に運ばれて広がっていきます。
晩春、落葉樹林ではの木の葉がいっぱいに広がり、林床に日光が届きにくくなって来た頃、福寿草はその姿を地上から姿を消し、翌年に向けて眠ってしまいます。
わずか二月ほどの姿しか目にすることが出来ませんが、カタクリなどとともに、春の妖精とよばれるところでしょう。
旧正月、一年で一番早く咲き始め、雪の中で黄金色(こがねいろ)の花をつけることから古くより愛され、めでたい正月の床飾りにされてきました。
もっとも、現在の元日は太陽暦ですので1ヶ月以上早く、開花の時期とずれるため、晩秋にハウスに入れ高温多湿の中で季節を錯覚させて元日に間に合わせるように咲かせています。
フクジュソウをはじめとしてキンポウゲ科の植物は、クレマチス、アネモネ、の他、クリスマスローズやラナンキュラスなど鮮やかな花を咲かせるものが多くありますが、トリカブトや黄連(オウレン)をはじめアルカロイドと呼ばれる強い薬効をもつ物も少なくありません。
福寿草も強心作用が古くから知られていますが、素人使いは厳禁です。

光琳の屏風に咲くや福寿草 漱石






(2012年2月号ピーネット掲載)

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