カラスウリ

 秋も深まったころ、竹やぶや、林の木々の上にカラスウリの真っ赤な卵型の実を目にされた方も多いのではないでしょうか。カラスウリは深まり行く秋を伝えてくれます。

 「藪先や暮れ行く年の烏瓜」小林一茶

 カラスウリは西瓜や南京と同じくウリ科の植物。古くは「唐朱瓜」とも書かれたことがあります。朱塗りの鳥居の朱。朱の結晶の鉱物の塊と似ているからとも伝えられています。

 繁殖力の強い植物で、高速道路の草むらで見かけることもあります。

 カラスウリは美しい花でも有名です。ウリ科の植物は南京や胡瓜のように黄色い花を咲かせるものが多いのですが、ユウガオ(カンピョウ)と同じく白い花を咲かせます。白いレース網のような美しい花を咲かせますが、ユウガオと同じく一夜花。夕方に咲いて翌朝にはしぼんで花が落ちてしまうため、なかなか目にすることが出来ません。

 理論物理学者で随筆家の寺田虎彦先生が、自宅の庭に咲くカラスウリの花を見て、面白い観察をしておられます。

 「縁側にいて、新聞が読めるか読めなくなるかくらいに日が暮れてくると、5分以上10分以内に全部の花が咲いてしまう。光度計の仕組みを備えているようだ」とのことです。

 優れた科学者は、専門分野以外でもするどい観察眼を持つものだと感心しました。

 カラスウリの果肉は非常に粘りがあり、民間薬としてヒビやアカギレにすり込んで用いられたとのことです。

 同じ仲間にキカラスウリがあります。カラスウリより少し大きな黄色の美しい卵型の実をつけます。

 キカラスウリは漢方薬として用いられます。実をカ楼実(カロジツ)、種をカ楼仁(カロニン)といいます。?楼仁はニラなどと煎じ、肋間神経痛などの胸の痛みに用いられます。また、根茎を?楼根(カロコン)といい、風邪の後、微熱や寝汗を伴い、食欲が落ちた時に用いられる漢方薬の大事な構成生薬です。

 キカラスウリの根茎をつぶし、でんぷんを水に晒して精製したものは天花粉(テンカフン)と呼ばれます。別名をアセ知らずとも呼ばれ、現在のベビーパウダーと同じ目的でアセモに用いられます。もっとも、現在のベビーパウダーはタルク(鉱物)の粉末で作られています。

(2010年10月号ピーネット掲載)

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