水仙


宮城県、南三陸町へ薬剤師会よりの派遣で行ってきました。
テレビで見て覚悟はしていましたが、山道をくだりかけて間もなく、目にしたのは一面の瓦礫の山。カーナビの画面にあるはずの建物がなくなり、4階まで津波に洗われた公立志津川病院の建物や、町の防災対策庁舎の鉄骨がわずかに残るだけ・・・。
何もかも津波に奪い去られた壮絶な光景でした。
拠点の南三陸町ベイサイドアリーナでは、休日・夜間は臨時診療所での調剤と、巡回の診療チームへの薬剤の払い出しにあたり、平常日は公立志津川病院のプレハブの仮診療所で300名を超える調剤と大忙しでした。
地元の方の話では、地域計画に三年、街づくりとなると五年先の目途となるとか。その中で、「この町に残って新たな南三陸の町を作ろう」と仲間と声を掛け合っているのだとのことでした。その日まで、生活に加えて仕事をどうするのか、大きな問題です。また、30%近い高齢化の地域での復興に、阪神の時と違う意味で大きな不安を感じました。
元々、医療崩壊が懸念されていた地域。必死で支えておられての状況に加え、今回の震災。全く再開の目途さえ立てられない医療機関も多いとのことでした。
今後とも、長期的な支援が必要だと強く感じました。
短い期間のボランテイアで、幾らほどのお役に立てたのかは判りませんが、一日も早い復興を祈るとともに、あたりまえに生活が出来ること、あたりまえに医療を受けられることのありがたさを、今更ながらに感じました。

診療所の設けられた歌津中学校へ、急遽、血糖測定器を届けることになりました。瓦礫に埋め尽くされた狭い市街地、急な坂道の上にあるのが避難所の設けられた中学校、その下に隣接する小学校のわずか1mほどのところまで津波は押し寄せていました。
その津波のラインに黄色の水仙が健気に咲いているのが印象的でした。

スイセンはヒガンバナ科、地中海原産の植物です。中国を経由し、さらに球根が海流に乗って日本に伝わったと考えられている生命力の強い植物です。
ヒガンバナ科の植物には、アルカロイドといって、効き目の強い成分を多く含みます。
そのため、スイセンを野蒜(のびる)とを間違えて食べた事故なども多く、有毒植物とされています。
ヒガンバナ科に含まれるアルカロイドの一つに、ガランタミンという成分があります。
スイセンの他、ヒガンバナやスノードロップ等に含まれます。日本で1927年に発見された成分ですが、吐き気などを催す等しかわかっていませんでした。
最近になって大きな注目を集めています。神経を伝える成分、アセチルコリンの濃度を高める働きがあり、アルツハイマー型の認知症の進行を抑制する働きがあることが証明されました。これは、従来使われていた認知症のくすりと同じ働きですが、さらに、神経伝達物質のアセチルコリンを有効利用する働き、また、神経が衰えるのを保護する作用も認められています。今年から、新型の認知症の薬として用いられ、その効果が期待されています。
ただし、スイセンには、他に有害成分も沢山含まれるので、絶対に口にしないで下さい。

東北の一日も早い復興を祈念して。

(2011年6月号ピーネット掲載)

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