土筆


数年前の春休み、娘の友人が遊びに来た時、堤防に「つくし」がたくさん出ているのに驚いていました。
「つくし」は知っていても「スギナ」は知らないとか。都会の娘さんには、つくしは和食のお店でお吸物に浮かべてあるもので、身近なものではなかったようです。
つくし摘みのあとは吸物や、つくしご飯、つくしの佃煮で西脇の春を楽しんでもらいました。
もう少しすると、つくし摘みの楽しみな頃を迎えます。
つくしはシダ植物門トクサ科トクサ属の植物、スギナの胞子茎です。シダの仲間で恐竜の時代から生きていたと考えられています。
つくしは数日の生命ですが、つくしの終えた後、スギナが出てきます。スギナの古名は杉菜。杉の樹木の様な形で元気に繁っていきます。つくしは土筆と書くように、筆先にあたる胞子嚢穂から胞子を風に乗せて繁殖します。つくしを摘んできて数時間も置いておくと筆先の部分、薄茶色の硬く詰まった所がひび割れたように開き、緑色の粉がみられます。これが胞子です。虫眼鏡で覗くと、つくしの胞子には白い糸が2本付いています。白い糸は弾糸といい、ツクシなどのトクサ属の他、苔類と粘菌類が持つ胞子の散布装置です。弾糸は、湿度が高い時は胞子に巻きついていますが、乾燥すると伸び、胞子嚢から出てきた胞子同士の間隔を広げ、晴天の日に遠くへ飛ぶようになります。うまい仕組みです。
つくしには葉緑素がなく、胞子を飛ばし役割を終えてしまうと枯れてしまいます。スギナは多くの葉緑素を持ち、光合成によって地下茎に栄養を蓄え、横に繁殖していきます。胞子を遠くに飛ばし、また地下茎でジワジワと繁殖をする。さすがは、恐竜時代から生き延びてきた繁殖力の強い植物です。
我が家の庭でも、芝生を張って数年間、スギナに悩まされました。引っこ抜いても引っこ抜いても、芝生の間からニョキニョキと生えてきます。クローバーなどと違って、芝生用の除草剤でも効果がなく、深く掘るわけにもいきません。浸透性の除草剤をスポンジに含ませ、スギナをスポンジで挟むように除草剤を塗布して、ようやく戦争は終結しました。
スギナはトクサ科。トクサはご存知でしょうか。湿気の多い日陰のところでも濃い緑色を示してくれるため、日本庭園の植え込みに用いられます。珪素(シリコン)を多く含み、縦筋が見られます。漢方では木賊(もくぞく)と呼ばれ、菊花などと併せ目の炎症に用いられるほか、利尿剤に用いられます。時折、木工制作の方やバイオリン製作の方が、木工研磨に使われるとかで購入を依頼されます。湯に浸し一節毎に開き、木片に張り付かせ乾燥させて使うとの事。滑らかにに磨けるとのこと、天然珪素のサンドペーパーといった所でしょう。お歯黒の時代には歯磨きにも使われたとの事です。
スギナは漢方では問荊(もんけい)と呼ばれますが、多く用いられるものではありません。
民間薬としては、漆かぶれに生のスギナをすり潰して用いられるほか、焼酎やウイスキーに漬けて痒み止めに用いられます。また、利尿作用を期待して用いられますが、腎機能の低下している方はカリウムが多いため避けてください。

つくし摘みは、鉄道線路沿いなどを避け、川原の堤防の下やたんぼの畦道など、除草剤のかかっていないところで楽しんでください。





(2011年3月号ピーネット掲載)

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