ヤマノイモ

 我が家では正月に「とろろ」を祝います。「とろろ」を祝うと、一年間を粘り腰で頑張れるからと教えられました。大きなすり鉢を出し、山芋をすりおろし、出汁の効いた熱い味噌汁で延ばし、炊き立てのご飯にかけて流し込むようにいただきます。何杯でも食べられます。子どもたちも大好評です。

 「とろろ」に使われるヤマノイモは、長芋、自然薯(じねんじょ)、大和芋(やまといも)、銀杏芋(いちょういも)など。長芋は中国原産。奈良時代に渡来し栽培されてきました。日本には日本原産の自然薯と呼ばれるものがあります。

 ヤマノイモはユリ目・ヤマノイモ科・ヤマノイモ属の植物。ヤマノイモ属の食用種をYam(ヤム)といいます。ヤムの多くは熱帯性植物ですが、「とろろ」に使われるヤマノイモは珍しく温帯性植物です。里芋が里で採れるのに比べ、山で採れるため山芋の名がついたといわれています。

 自然薯は、本州では広く身近な所でも生えています。初冬にハート型の葉とムカゴを目印に、天に向かって蔓が右巻きになっているものを見つけておいてください。モミ殻を目印に置いておきます。冬になり蔓が枯れた頃に掘りあげます。地面を5〜6センチ程掘り、6本のひげ根が見つかればまず間違いがありません。茎の跡が6個あれば6年生。大きなものが期待できます。地表近くでは細くても、地下深くでは太く、1メートルを超えるものもあり、掘り進めるのは大変な作業です。最後、掘った穴を埋め戻すときに、蔓の先端・芋の端を後のために埋めておくのが山の掟とのことです。

 丹波のイノシシは自然薯と松茸をたらふく食べているので、特別においしいとか。はたして、松茸が豊作(と聞こえただけでしたが)の今年はどうなのでしょう?

 丹波の「山の芋」は有名です。捏芋(つくねいも)と呼ばれる大和芋の一種。直径10センチ程のボール状で、非常に粘りが強く濃厚な味で贈答品にも喜ばれます。
 関東では、手のひらの様な形の銀杏芋(いちょういも)といわれるヤマノイモが主流です。

 いずれの品種でも、ヤマノイモはサツマイモなどと違い、アルファ型のデンプンのため、生で食べられます。すりおろしたりしてネバネバをそのままで食されることが多いようです。不思議なことに中国では、油で炒めたり、スープにしたりして加熱して食されることが多く、生ではまず食べられません。ネバネバの好みの違いなのでしょうか。

 漢方では「山薬(サンヤク)」として広く用いられます。中国の古書「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」には、「虚弱体質を補い、胃腸の調子をよくし、暑さ寒さにも耐え、耳、目もよくし、長寿を保つことができる」と書かれています。

 胃腸機能が弱っての食欲不振、軟便、長く続く下痢などの症状に、朝鮮人参などと組み合わされ胃腸機能を高めて下痢などを治す「参苓白朮散」などが用いられます。また、乾燥させたヤマノイモ、山薬だけを毎日50〜60グラム程スープにしてもよいとされます。補腎作用といい、夜間尿、頻尿、ポテンツなどの症状に六味丸、八味丸、牛車腎気丸などの漢方薬が用いられます。ただし、のぼせ易い人、むくみ易い人には合わないと憶えておいてください。

 医食同源という言葉があります。ヤマノイモは胃腸の弱い人にもお勧めしたい食べ物です。

(2011年1月号ピーネット掲載)

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